我、羅列に生きる
１
この世界はむし暑いだけ。只々むし暑いだけ。
明滅する都市。路上を渡る風。
地下に潜む銀の金の緑の鉱石。錆びた大陸。
沈没船。釘。傷。ダイヤモンド。
俺の言葉は只の声の羅列。
俺の言葉は只の声の羅列。
２
太陽はいつもイカしてる。イカしてる。
灼熱地獄の真っ只中。生きろ生きろと歌ってる。
その焼けたアスファルトの上を、恐竜みたいにノシノシ歩け。
お前の足跡でこの星を一杯にしろ。
俺の言葉は只の声の羅列。
俺の言葉は只の声の羅列。
雨。 風。 輪転機。 アスファルト。
聴衆。 声。 神の扉。 開く時。
誰かが。 ト バ サ レ タ。
３
鳥よ聞こえているか？大好きな小鳥よ、聞こえているか？
彼には聞こえるのさ。やわらかい足音。 背骨の方から聞こえてくるのさ。
例えば路上のガキが弾けた時みたいに。
例えば大好きな女の子の髪の毛が、逆光で揺れた時みたいに。
うまくは言えんけど聞こえて来る。
次からの足音が聞こえてくる。
俺達はこの先、何度もその足音を聞くのさ。
その足音は塊になって、新しい讃美歌を歌いだす。
おかげで下界のポンプが、ビビりながらもギシギシ動き出した。
おかげで次のポンプ達が、ビビりながらもギシギシ動き出した。
ギシギシギシギシ血を流し。ギシギシギシギシ暴れだす。
ギシギシギシギシ都市をめぐり。ギシギシギシギシ動きだす。
ギシギシギシギシ、ギシギシギシギシ、
ギシギシギシギシ、ギシギシギシギ、
ギシギシギシギシ、ギシギシギシギシ、
ギシギシギシギシ、ギシギシギシギ、シャララ。
誰かが言った２１世紀。彼は言う、次へ行く生命。
生きろ生きろ生きろ生きろ。目覚ましはなった。起きろ。起きろ。
きっときっと地割れの中から、新しいお前に出会えるから。
きっときっとお前の大好きな、新しい讃美歌が聞こえて来るから。
その為に今を生きろ、産まれ変わるために。
その為に今を起きろ、産まれ変わるために。
俺の言葉は只の声の羅列。
俺の言葉は只の声の羅列。
４
その時ラジオが言い出した。
壊れた声で、壊れた声で、壊れた声で言い出した。
偉大な女が死んだとよ。片翼の女神が死んだとよ。
彼女は死ぬ前に、こ う 言 っ た ん だ。
もうすぐ雨が、もうすぐ雨が、
私の雨が、もうすぐ雨が降りそうよ。
彼女の雨が降りだした。彼女の雨が降りだした。
彼女の名前はノーマジーン。惑星の薔薇ノーマジーン。
ギシギシ動いたポンプ達も、 今は彼女の為にしばし動きを止めるだろう。
きっとこれが最後の雨さ。次に行くための最後の雨さ。
もう止められない。止める必要もない。
俺の言葉は只の声の羅列。
俺の言葉は只の声の羅列。
俺の言葉は只の声の羅列。
俺の言葉は只の声の羅列。